喫する

date:2005-09-04

客との約束まで1時間あったので喫茶店に入った。喫茶店で茶を喫する者などいない。メニューを出したもらったが、ホットコーヒーとアイスコーヒーくらいしか載っていない。額の汗を拭きながら、アイスコーヒーを注文した。

仕事の資料を広げる。今日の夕方までに提出しなければいけない報告書があるが、資料を読んでさえいない。蛍光ペンを握り、一行目、二行目、と順に読んでいく。アイスコーヒーはぬるくて、水っぽかった。

となりから煙が漂ってきた。喫茶店で茶を喫する者などいない。しかし煙草を喫する者は多い。臭い煙が気になっていらいらする。息を大きく吐き出し、うつむいて息を吸う。こうすれば、サラリーマンの汚れた肺から出てきた煙を吸い込まずにすむ。

嫌なら店を出て行けばよいのだが、アイスコーヒーをひと口しか飲んでいないことに負い目を感じて、出て行かない。喫茶店では何も喫することができない。

ただ、涼しい部屋で座って資料を読みたいだけなのだ。少々、値が張ってもかまわない。

夕方、新幹線の席につく。禁煙の指定席なら、邪魔されない。ダークスーツを着た女性が歩いてきた。私の席の頭上に書かれた2Aと文字と、手元の指定席券を何度か見比べて、私が座っている1Aの隣に座る。挨拶もせずに、鞄の中からフレームなしの眼鏡を取り出した。仕事の資料らしきものを読み始める。文章やグラフがかかれた報告書のようだ。私も黙って、資料に目を通す。

1時間ほど経ったところで、お客さん時間ですよ、と声をかけられた。料金を支払い、コスプレ喫茶を後にする。

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