date: | 2001-08-23 |
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騒ぎがはじまったのは、雨雲が低くたれこめた真冬の土曜日の午後だった。と、記憶しています。違うかも知れませんが、とにかく土曜日です。
毎週土曜日、カトリック系の幼稚園の英会話教室なるものに通っていました。そこで行われていたことと言えば、挨拶する、ぬり絵する、挨拶する、帰る、くらいのものでした。
台風を、英語でタイフーンいうことを知ったのは、この頃で、台風の季節になると英会話教室を思い出します。
地元には、英語を習っている子供なんて、ほとんどいなかったので、軽くインテリぶっていました。同級生の質問にも、さらりと答えます。例えば「英語で水色って何っていうの?」「ライトブルー」「おお!さすが」という感じです。しかし、色を英語で言うくらいでは、本当の意味でセルフ・プロデュースができたことにならないと、気づき始めました。もっと、自分を高めなければ、と。そんなある日、落書きを見かけたのです。
SEX
Xを使う単語なんて知りませんでしたので、ルーシー先生に尋ねたら、かなり困惑した様子で黙りこんでしまったのを覚えています。あまりにしつこいので、事務をしている日本人のおっさんが現れたりして、大変な騒ぎで、まさにタイフーンです。カトリック系の幼稚園で SEX を教えろとは、我ながら挑戦的な質問だったと思います。
隠されると、ますます知りたくなるもので、自宅の国語辞典、漢和辞典、伝家の宝刀医学事典に至るまで調べました。そして、納得。小学生には、刺激的な内容でした。もちろん、次の日から、使いまくりです。
ところが、単語だけ知っていても、実践に役立つ英語にはなりません。いきなり寝技に持ち込んでいたら、まとまる話もまとまらないわけです。「食事でもどう」「夜景を見に行こう」「部屋をとってあるんだ」「ね、君の足に触らせてくれないか」と順序を踏む必要があるのです。
結局、しょうもない単語ばかり知っていても、中学英語は伸びませんでした。きちんと文法を身に付けた人たちこそが、みるみる力を付けていったというわけです。英語だけでなく。最初に教えてあげたのは私なのに、最後にするのも私です。医学事典や成人雑誌から、情報を集めて、それを共有するのにどれだけの努力と、勇気が必要だったか。モテない自分が悪いのだと、頭では分かっていても、そうそう、人生は割りきれるものばかりじゃない。
(台風雑文祭)