date: | 2002-05-12 |
---|
世の中には2種類の人間がいます。毎回同じものを注文する者と、そうでない者だ。私がいつもの注文をすると、今夜もそれを頼むのねと微笑みながら、店の奥に入っていきました。
何日も研究室に泊まり込んでいたにも関わらず、全く成果らしきものが得られなくて、まいっていた夜でした。コンピュータのモニタを眺め続けたせいで何やらクラクラしていた上に、キーボードを叩きすぎて腱鞘炎気味で、おまけに目を閉じると前が見えないという有り様でした。普段は、明晰であるはずの灰色の脳細胞が全く働いていなかったのです。頭の中で100人のバスケットボール選手が天使をしているような状態だと言えば分かりやすいかも知れません。
そんなわけで、少し休憩しようと、その店に入ったのです。安っぽいスピーカーから流れるビリー・ジョエルの Pianoman を聴いていると、苦しんでいるのが自分ひとりではないような気がしてくるから不思議です。カウンターの前では、他の孤独な男たちも音楽に耳を傾けています。孤独という名の酒を酌み交わすほうが、独りで飲むよりマシだと歌うビリー・ジョエルに励まされながら。
やがてカウンターにやってきた彼女が、私を呼びました。注文していたものが手渡され、私は金を手渡します。それから研究室へ戻り、その夜もチキン南蛮弁当をいただきました。
(飲めや歌えや雑文祭)